08年12月議会の一般質問全文
今日の質問の議事録を記します。なお、これは原稿ベースで、速報版です。実際の議事録は若干異なることをお含み置きください。正規は後に発行される議事録に拠ります。
《質問》
こんにちは。民主クラブの山本忠相です。今回はいわゆる「定額給付金」について、もう一つは市内における「緑」の保全について質問させていただきます。
まず「定額給付金」についてです。昨日の先輩議員の議論と重なるところもあるかと思いますが、ご容赦をいただきたいと思います。
10月30日、麻生総理は追加経済対策の柱の一つとして「定額給付金」の実施を打ち出しましたが、その実施に関して政府・与党内でも意見が分かれ、定まらない状況が続きました。11月12日にようやく与党内で、給付金額を1人当たり1万2000円、18歳以下と65歳以上の方々には8000円を加算することでまとまりましたが、28日に総務省が開いた説明会では、制度の骨格もはっきりと示されず、あいまいな返答に怒号が飛んだとも聞き及んでおります。
給付金に使われる2兆円というお金は、どこかから見つかった埋蔵金ではなく、降って沸いたお金でもありません。言うまでもなく私達国民市民の納めた税金であります。その税金に「給付金」と名づけて「お上が民にくれてやる」と言わんばかりに、国民にバラマこうとしていることが、いかにも麻生さんらしいなぁと感じるのは私だけでしょうか。
さて、この「定額給付金」は緊急の経済対策・景気対策ということでの実施ですが、私には国民市民のことを考えた経済対策というよりも衆議院総選挙の対策にしか見えないのですが、市長はどう思われますか。ご所見をお伺いします。
万が一、定額給付金が実施されることになったとして、実施に当たってどういう問題点があり、どういう課題があると認識されていますか。分かりうる、想定できる範囲でお答え下さい。
次に市内における「緑」の保全についてです。
先日、埼玉県志木市へ調査に行ってまいりました。その中身は後ほどお話させていただきますが、その際に和歌山市の緑はどういう現状なのだろうかという疑問が頭に浮かんだわけです。戻ってきて調べ始めましたら、本市には平成11年に「緑の基本計画」というものが策定されているということが分かりました。
そこでこの「緑の基本計画」の基準年である平成7年と比べて、現状の市内の「緑」は増えているのか、減っているのか。お答え下さい。
先輩議員でありました田上先生が平成15年2月議会において、この「緑の基本計画」について取り上げられ、このときも今回と同じように、緑がどれだけ増えたのか質問されました。
当時の岡本都市計画部長が答弁に立たれ、「緑の基本計画における市街地の緑化重点地区内の進捗状況についてでございますが、まず公共施設からという観点から、平成14年4月に市の緑化基準を定め、市道及び施設などを管理する関係部局に協力をお願いし、緑化推進に努めているところであります。しかし、現時点ではとりたてて緑化が進んでいると言える状況にはまだ至っていません。
このため、現在施行されている和歌山市緑を守る条例による施行規則及び和歌山市緑化補助要綱を見直すなどを行い、本市の財政状況の問題もございますが、再度地区住民や事業者に対しても御協力をいただきながら緑化推進を図ってまいらなければと考えています。」とお答えになられています。
それから5年10ヶ月が経過しました。その後の経過はどうなっていますか。お答え下さい。
以上で第1問といたします。
《大橋市長 答弁》
景気が急激に悪化し、将来に不安を感じる中、消費が低迷し、家庭においては大変厳しい生活を強いられる人も数多くいると考えます。こうしたことを踏まえ、国の新総合経済対策の中で定額給付金の支給が検討されているものと考えます。
そのため、この定額給付金を支給することは景気の下支え要因として一定の効果があるものと期待しています。
《山本まちづくり局長 答弁》
まず最初に大きな問題点として考えられるのが短期間に多くの人が手続きをするということで、どういう方法を取れば一番混乱なく正確に安全に迅速に実施できるかが課題となっています。
現在、国の素案・たたき台では支給方法については口座振込みを中心に考えておりますが、本人確認書類や銀行口座を持たない人への対応などがございます。また一人暮らしの高齢者や障害者、認知症の方などからの申請方法、住所不定者やDV被害者等への対応、転入転出の場合の取り扱い、外国人の具体的な範囲、振り込め詐欺等にあわないための犯罪防止の広報など多くの問題と課題があります。
市内の緑の保全について、緑の基本計画は、緑の保全と創出を進めるために平成11年度を初年度とし、平成27年度を目標として策定しています。
計画の目標水準を策定する際、基準となった平成7年とおよそ10年経過した平成18年の緑地を比較した場合、公園で約31ha増加していますが、農地で約420ha減少するなどの要因で、結果として市内全体で約4%、約512ha減少しています。
平成15年以来の経過についてですが、緑の基本計画では「緑化の目標及び推進方針」として、基準年の平成7年の面積と比較して、公共公益施設の緑化については3倍、その他の民有地等では2倍にすることを目標に各種施策を推進しています。現在の取り組みとしては、まず市の施設から始めることとして「和歌山市所有施設緑化の推進基準」を策定するとともに、今後の取り組みとしましては、市所有施設の緑化から県や国などの公共施設等にも緑化の推進を要請するとともに、民有地等の緑化推進へと広げてまいりたいと考えています。
《再質問》
それぞれお答えいただきましたので、再質問をさせていただきます。まずは「定額給付金」についてです。
市長は1問目のご答弁で定額給付金が「景気の下支え要因として一定の効果があるものと期待している」と答えられました。果たして本当に効果があるのでしょうか。
日本総研の藤井英彦調査部長は「低中所得者層の所得、雇用環境が悪化する中、給付金のほぼ全額が実需に向かうとみている。GDP国内総生産を0.4ポイント程度押し上げる効果もある」と期待するコメントを寄せられています。しかし、GDPの0.4ポイントに相当する金額は2兆円ですから、波及効率は1.0と驚くほど優秀な成績です。
ところが、実施者である政府の与謝野馨経済財政担当大臣は「今後1年間でGDPを実質で0.1%、名目でも0.1%程度押し上げる効果がある」と試算しました。つまり原価割れです。
その上、給付は毎月行われるものではありません。1回こっきりです。1万2千円ないしは2万円を1年で考えると、1ヶ月あたり1千円ないしは1600円余りにしかならない。こんな金額で生活支援といえるのか、これで生活が助かると思いますか。ご所見をお聞かせ下さい。
第1問で山本局長から、多くの問題点や課題についてお答えいただきました。これらはあくまでも一部で、報道などではこれでもかと書き並べているのを目にすることが出来ます。どれだけ混乱させられているか、少し新聞の見出しを並べてみます。「国の迷走に不満も 鹿児島」「あいまい制度に不安の声 福岡」「生活弱者どう救う? 長野」「『経費は全額国負担』と注文も 京都」「担当課も決められない 茨城」あげくは「『市町村にメリットない』など厳しい意見相次ぐ 神奈川」ざっと見ただけでもこれだけありました。
国からやれと言われたら拒否できない制度で、金は渡すから後は勝手にやってくれ、それが「地方分権だ」という無責任さ身勝手さに「和歌山市は国の奴隷じゃないんだぞ」と怒りすら覚えます。
こんな思い付きのような制度を実行しようとし、丸投げし、本市職員の皆さんに多大なご苦労を掛けていることは間違いありません。職員の身を預かる市長としてどうお感じになってらっしゃいますか。お伺いします。
先程も触れました、国の示したたたき台では、経費は全額国が負担するとされています。しかし、その経費の中で、職員の本給は負担されません。現在の配置から人を手当てして、給付金支給のために人を配置しても、その人のお給料が国から出ないのであれば、それは実質和歌山市の負担となります。一方、地方財政健全化法で、無駄な金は使うな、財政を守れと言っておきながら、余分な金を使わせる。国は二重人格かと訝ってしまいます。
実質市の負担があることについて市長はどう思われますか。お聞かせ下さい。
今回、和歌山市に下りてくるであろう給付金の金額はおよそ60億円になると昨日の議論でもお答えになられていました。この60億をそのまま市の財政に入れてもらって、使い道は地域で決めさせてもらう方が和歌山市にとっても得策ではないかと思いますが、市長はどう思われますか。
次に市内における「緑」の保全についてです。
ご答弁の中で10年経って約512ha、甲子園球場約133個分の緑を減らしてしまったということでした。また、田上先生の質問に対する答弁から5年10ヶ月の間、目標は設定したものの、具体的には何もできていないということも分かりました。
田上先生は同じ質問の中で「これからも期待いたします。もうチェックする機会がございませんので、皆さん方に期待する以外に今日の私の立場はございません。」と述べられています。残念ながら田上先生の期待は見事に裏切られたと言わざるを得ません。だからといって、後ろ向きな批判ばかりしても仕方ありません。
冒頭で触れました、志木市での調査について少しお話します。
東武東上線志木駅から程近いところに今回調査した「志木ガーデンヒルズ」という14階建て、総戸数337個の高層マンションがあります。この地は慶應義塾志木高校学生寮跡地で、慶應義塾の出身であり、電力王と呼ばれた松永安左ヱ門氏によって寄贈された敷地に、志木高校の前身となる慶應義塾農業高等学校が設置されたところから始まります。
農業学校だったので多くの樹木が校内に植えられていましたし、もともと江戸幕府老中で上水道工事を取り仕切っていた川越藩主松平信綱が整備した野火止(のびどめ)用水があり、農業が盛んで多くの自然が残されていました。
マンション建設では既存の樹木をそのまま残し、マンションを建設するという手法が取られました。建設業者からすれば伐採して、建物が完成後にどこかから樹木を移植する方が安上がりだそうです。しかし、移植された木はその地の緑ではありません。歴史と愛着のあるこの地の緑を出来うる限りそのまま残そうと、マンション周辺の住民や志木市、ディベロッパーが協議を重ねました。その結果、緑地のほぼ半分の1260平方メートルを市民の誰もが入れるように整備、残りの半分はセキュリティーラインの内側で一般公開されませんが、一体感を持って保存することとなりました。公開緑地は市が30年間無料で借り上げ、税を減免しています。
これが、既存樹木を保全したままでマンション建設を行った全国で最初のケースとなりました。
当初私は、和歌山市の場合、東京とは違って公の緑が残っているから関係ないと思っていましたが、先程のご答弁の通り、そうではなかったのです。
そこで、提案をさせていただきますが、緑を残す、または増やす一つの手法として、マンションの新規開発などで、積極的に既存の緑を生かした建て方をするなどした場合に、固定資産税の一定期間一部免除など緑優遇税制を導入し、市内の緑を保全していくことができないでしょうか。トヨタのプリウスなど、車にも自動車グリーン税制が設けられています。いわゆるグリーン優遇税制の土地版と言っても良いと思います。いかがでしょうか、当局の見解を求めます。
以上をお伺いして、第2問といたします。
《大橋市長 答弁》
本市での支給総額については約60億円と見込んでおり、また18才以下の子どもが2人いる4人家族の標準世帯においては6万4千円の支給が予定されています。
最近の経済情勢を踏まえて考えますと、厳しい生活を支える部分と新たな消費を生み出す部分があり、定額給付金の支給は市民への生活支援であり、地域への景気対策になると考えます。
定額給付金の事務につきましては、年度途中の緊急業務でありますので、当然、職員に負担をかけることになりますが、市民のために全力で給付業務に取り組みたいと考えております。
定額給付金は国の施策として実施されるものであることから、経費については国において十分に財源措置されるべきであると考えております。
国においてもたたき台を示した段階であり、今後制度の詳細等が設計されていくと思いますので、他の団体と歩調を合わせて市の考えができる限り反映されるよう取り組んでいくとともに、年度末という繁忙期にあたることが予想されることから、その費用が交付金の対象となると考えられる外部委託を極力活用して、職員の負担ができるだけ軽減されるように事務の執行について検討していきたいと考えています。
平成19年度決算で連結実質赤字比率が早期健全化基準を超え、県庁所在市・中核市で唯一イエローカードとなった本市にとって、財政危機を克服し、地域を活性化させるためには、定額給付金に加えて、更に今まで以上に使途が限定されない一般財源が十分に確保されることが必要です。
従来より三位一体の改革で削減された地方交付税の復元や地方税財源の拡充を全国市長会等を通じて国に求めているところであり、今後も引き続き一般財源の確保について取り組んでまいります。
《名越財政局長 答弁》
市内の緑を増やすために、固定資産税の一定期間一部免除など緑優遇税制を導入してはどうかとの再質問ですが、他の土地と課税の公平性を失することがないか、慎重に判断しなければならないことや、厳しい財政状況の中、市の財政健全化に取り組んでいることから、現時点で、減免制度を拡充することは困難であると考えています。
なお、市税条例に基づき、市等の公用又は公共の用に供する固定資産については、非課税措置が適用され、また公益のために直接専用する固定資産、有料で使用するものは除きますが、これらについては減免措置が適用されます。
これらの条項に該当する場合には、申請に基づき、非課税措置や減免措置が適用されるよう、適正に対応しています。
《再々質問》
第3問に入らせていただきます。まず市内における「緑」の保全についてです。
平成19年度市政世論調査の結果で、環境は10年前と比べて良くなっていると答えた人が8.6%、悪くなっていると答えた人が12.1%いらっしゃいました。悪くなっていると答えた人のうち52.5%が、緑化の推進不足を環境悪化の一番の原因だと答えています。
ご答弁にありましたように、確かに財政状況は厳しいです。あえて税収を減らすようなことはしたくないということも理解できます。しかし、居住環境に緑を求める気運は高く、緑の多いマンションは一般のマンションとも差別化が出来ます。優遇があれば積極的に動くディベロッパーもいるでしょうし、好んで求められれば市外からの人口流入も考えられます。住民税も納めてくれる方も増えます。まさに逆転の発想、発想の転換です。
緑は市民の財産です。同時に二酸化炭素の吸収源という意味では全地球の財産であり、公益性もあります。すぐにとは言いませんが、ぜひ検討をしていただけるよう求めます。今後、私自身もシミュレーションなどもしてみようと思います。
最後に「定額給付金」についてです。
市長も職員には負担になるとおっしゃいました。1万2千円のために、職員にも市民にも給付金額以上の負担になるのではないでしょうか。
同じ2兆円でももっと賢い使い方があると思います。例えば介護職員の給料の補助に使えればよいと思います。本年3月末における和歌山市の高齢化率は23.5%、まもなく市民の4人に1人が65歳以上の方となります。その一方で介護職に就く方の数が減ってきています。仕事がキツイ、勤務時間が長い、その割りに給料が安い、それで仕事を離れる方が増え、お世話する側とされる側のバランスが崩れてきています。
2兆円を給料の補助に出来れば、仕事を離れる方も少しは減り、新たな雇用を生み出すことも出来ます。所得税や住民税が入ってくれば、賭けたお金ぐらいは戻ってくるのではないでしょうか。これに留まらず、方策は他にもいくらでもあります。
その昔、江本孟紀さんが「ベンチがアホやから」と言って球界を引退されました。私達国民市民は「首相官邸がアホやから」と言って生活を止めるわけにはいかないのです。市長には、給付金など止めて、もっと良い使い道、地方の実情に即した使い道を探るべきだと市長会などで求めていただきたいと思います。
最後に、愚問ではありますが、市長は給付金が実施された場合、受け取られるのでしょうか、受け取られないのでしょうか。以上お伺いして私の質問とさせていただきます。
《大橋市長 答弁》
消費を拡大することで景気を下支えしようというのが定額給付金の趣旨と理解しておりますので、あくまで一般論ですが、所得の多い少ないに関わらず、受け取って使うべきものと考えております。
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