09年9月議会の一般質問全文
今日の質問の議事録を記します。なお、これは原稿ベースで、速報版です。実際の議事録は若干異なることをお含み置きください。正規は後に発行される議事録に拠ります。
《質問》
民主クラブの山本忠相です。今回は本市における身体障害者の雇用について、及び公営住宅について質問をさせていただきます。
まず、本市における身体障害者の雇用についてです。
医療や介護技術の飛躍的な向上によって、障害を持たれた方でも、社会進出が可能となり、社会の一員として活き活きと活躍される方も多くなってきました。
このような状況を鑑み、厚生労働省でも障害者の社会進出を妨げてはならない、より一層推し進めるべきとの考えで、「障害者の雇用の促進等に関する法律」を改正してきました。
この「障害者の雇用の促進等に関する法律」は昭和35年に成立したものですが、それから幾度となく改正され、直近では今年の7月15日に改正されています。
この法律には、障害者に職業を紹介すること、就業や生活支援を行うこと、身体障害者および知的障害者の雇用義務などが定められています。
その中に、民間企業や特殊法人、国や地方公共団体に対して、一定数以上の障害者の雇用が具体的な数字で定められています。これを法定雇用率といいますが、常用労働者数56人以上規模の民間企業では1.8%。常用労働者数48人以上規模の特殊法人では2.1%。職員数48人以上の国や地方公共団体に対しは2.1%。うち、職員数50人以上の都道府県等の教育委員会は2.0%という法定雇用率が設定されています。
今年の4月に施行された法改正の背景には、2つの要因があります。
まず一つ目は、障害者の勤労意欲の高まりです。厚労省の調査では、障害者の求職件数は1998年に7万8千件だったものが、2007年には10万7千件と37%余り増加しました。また実際に就職した件数は98年で2万6千件だったものが、07年には4万6千件と約77%増加しました。
一方で課題もあります。大企業では障害者雇用が増加している反面、地域の身近な雇用の場である中小企業での雇用が低下してきているのです。100人から299人の従業員を抱える企業の実雇用率が一番低いのです。
2つ目は、短時間労働への対応です。障害をお持ちの方は体調に左右されたり、また診療やリハビリのために通院することもあり、フルタイムの勤務よりパートのような短時間勤務を好む傾向が一部にあります。しかし、これまでの法律では短時間労働に対応できていなかったため、雇用主は週30時間勤務の常用雇用を基本とし、現状で短時間労働者を受け入れる利点に乏しかったのが現状です。
これら2つの要因を踏まえて、来年7月1日から、中小企業における障害者雇用の促進と、短時間労働に対応した雇用率の見直しなどが追加されることになりました。
これら法律と環境の整備が整えられつつある中で、本市においては、この法律に対しどのように対応してきたのでしょうか。また、本市における障害者雇用の現状はどうなっていますか。正規職員、非常勤職員も含めてお答え下さい。
次に、公営住宅についてです。
先ごろ、公営住宅が注目される出来事がありました。リーマン・ショックから波及した経済不況によって会社から解雇され、会社の寮を放り出された派遣労働者の受け皿となったのが公営住宅でありました。
しかし、これより前に公営住宅の課題・問題点で注目され始めていました。それが「住民の少子高齢化」と「建物の老朽化」です。
高度経済成長期前後に建設された団地が老朽化し、スラム化しつつあるという問題が表面化し始めました。有名なところでは、大阪の千里ニュータウンで、1962年11月に街開きを行って以降、順調に人口を伸ばしてきました。しかし1980年代を境に、人口は減少傾向にあるものの、世帯数は増加の傾向をたどりました。これは1世帯当たりの構成人数が減っていることを表しています。
ニュータウン完成時までに入居した家族の多くが、30~40歳代の世帯主を中心とする家族で、その子ども達が現在は成長して独立し、ニュータウンの外に住むようになったため、入居者の高齢化が進みました。
また若い夫婦が居住しても子どもが少なかったり、いなかったりするために少子化が進みつつあります。
和歌山市に眼を向けてみます。本市においても、市内にある団地の多くが老朽化し、耐用年数を大幅に過ぎた建物が多数存在しています。
当局からいただいた資料を少し分析してみました。すると、和歌山市の公営住宅の中で今年耐用年限を過ぎたものが29団地1043戸。うち10年以上過ぎてしまっているものが800戸余りありました。資料を元に自分で調べたので、間違っていたら指摘してください。
団地に住む人についても、先程お話した千里ニュータウンと傾向は同じです。団地の完成時に入居した30~40歳代の世帯主が、そのまま高齢化してしまっています。また公営住宅は収入の制限があり、比較的高額の年金を受け取れる方は、団地から出て行ってしまいました。
このように高齢者や低所得者だけが団地に取り残されて、以前のような「まち」や「むら」といったコミュニティを維持できない状態になっていると考えます。
そこで、このような現状を当局はどのように認識していますか。
以上をお伺いして、第1問といたします。
《笠野総務局長 答弁》
障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく障害者の法定雇用率は、官公庁が2.1%、教育委員会が2.0%、水道局が2.1%で、それぞれが事業所として位置づけられています。
本市では、障害者の雇用の促進を図るため、平成17年度から身体障害者を対象とした特別枠の採用試験を実施し、毎年1名ずつの身体障害者を採用し、また、平成19年度からは知的障害者を対象とした特別枠の非常勤職員採用試験を実施し、毎年1名ずつの知的障害者を採用しているところです。
また、非常勤職員及び賃金支弁職員につきましては、法定雇用率には算入できませんが、本人の申し出等により把握している限りで6名の障害者を雇用しています。さらに、採用された職員の能力が十分発揮できるよう、職場の環境づくりを行い、雇用の安定を図るよう努めているところです。
このことにより、本市の平成21年6月1日現在における雇用率は、市長部局では2.51%、教育委員会では2.47%、水道局では2.43%であり、いずれも法定雇用率を上回っています。
《千賀建設局長 答弁》
現在、住宅部において管理している市営住宅の中には、建築後かなりの年数が経過している団地も多くあります。また、団地の居住者も少子化が進み、高齢者世帯等がふえているという現状につきましては、今、例示されました事例と同様でありまして、その点につきましては十分認識してございます。
つきましては、今後、老朽化が著しい団地の建てかえの際には、世代間の交流を図り、バランスのとれたコミュニティーを再生、維持することができるよう努めてまいります。
《再質問》
まず、本市における身体障害者の雇用についてです。
ご答弁にありましたが、本市の雇用率は6月1日現在、市長部局2.51%、教育委員会で2.47%、水道局2.43%で、いずれも法定雇用率2.1%を超えているとのことです。
法定雇用率を超えてはいますが、決して褒められる数字ではないと思います。
さて、ここで民間企業での事例をご紹介します。
2007年11月東京都武蔵野市にある横河電機㈱へ視察に伺いました。横河電機では横河ファウンドリー㈱という特例子会社を設立し、そこに21名の知的障害者の方がお勤めになっています。彼らは横河電機や関連会社から発注される名刺やスタンプの製造、ファイルのリサイクル、社内で発生した古紙やゴミの回収、請求書や資料の封詰め、廃機器の解体分別などを請け負っています。
横河電機本社のロビーで待っていると、実際に働いている知的障害の方が迎えに来て下さり、職場まで案内して下さいました。職場では業務を担当している人が、それぞれに自分のしている仕事を説明して下さいました。後に人事担当(横河電機では「人財部」と言います)の方から聞いた話ですが、見学者に対する説明は会社からこう言いなさいと決めているのではなく、各人がそれぞれに自分で考え、説明しているとのことでした。また、例えば、スタンプを作る人の場合、小さいスペースに漢字がたくさん並ぶと、字がつぶれて見えにくいので、書体を漢字だけ教科書体に変えるなど、それぞれに工夫をする余地が与えられていました。
ただ単にマニュアル通りこなすだけの仕事ではなく、それぞれに工夫し考える余地を与えることで、あくまでも自立の一助になるように、との配慮がなされていました。また、一つの業務に偏ることがないよう、複数の業務ができるように訓練されているそうです。これは、別の社会に出たとき、一つのことしかできないよりもいくつかのことができるほうが、道が広がるという配慮からです。
本市では採用した障害者を組織の中に取り入れて、障害者が市役所に合わせるというやり方になっています。しかし、横河電機ではその逆で、障害者が活躍できる職場を会社が作る、つまり会社が障害者に合わせているのです。
横河電機の事例を参考に、名刺やスタンプの製造、ファイルのリサイクル、庁内で発生した古紙やゴミの回収、請求書や資料の封詰め、廃機器の解体分別などを専門に行なうチームを作ったりして、対応できないでしょうか。
次に、公営住宅についてです。
先のご答弁の中で、高齢世帯等が増えている現状を十分認識しているとお答えをいただきました。問題は認識したその次です。次の一手をどう打つのか。バランスの取れたコミュニティを再生・維持することができるよう努められるともお答えいただきました。
では、具体的にコミュニティを再生・維持する策はあるのかどうかをお答え下さい。
コミュニティーバランスが取りにくい、口で言うほど簡単に維持していけないという現状は理解しております。例えば、現住者が様々な理由で部屋を移動してくれず、居住者の集約が進まない。財政の課題もあり、なかなか建て替えに着手できない現状も良く分かります。
しかし、それは団地という一つの街に対する当局の先行き・構想・次のプランが示せておらず、漠然と住居の移動をお願いしているからではないでしょうか。
具体的でなくとも、夢物語でもいいと思うんです。団地を中心とした「まち」や「むら」づくりのプラン・ビジョンを示してくことが、住民の理解と協力につながっていくのではないかと思います。
一人のエゴのために、他の多くの方が享受できるであろう快適な住環境を得ることができない。これは公共の福祉を優先するという考え方に反しているのではないかとも思います。
このように、まちづくりのビジョンを示していくことについて、当局の見解をお示し下さい。
《大橋市長 答弁》
先ほど総務局長が御答弁いたしましたとおり、本市は法定雇用率を達成はしていますが、地方公共団体は障害者の雇用等に関する法律に基づいて、民間に率先垂範して法定雇用率を達成、維持することが求められています。障害者の方を採用するときには、特定の障害部位を限定するのではなく、採用された方の障害に応じた職務設計をすることが適切だと言われておりますので、採用された障害を持つ職員が十分取り組める職務を提供するとともに、今後も身体障害者を対象とした特別枠の職員採用試験を継続し、雇用を図ってまいります。
一方、議員御提案の事業所が障害者に合わせた職場づくりを行い、障害者の雇用を促進していくことも重要なことであります。本市におきましても、知的障害者を対象とした非常勤職員の採用試験のときにはその方法を導入しておりますが、今後、一人でも多くの障害者の方が活躍できるよう、職域の拡大を検討してまいります。
《千賀建設局長 答弁》
バランスのとれたコミュニティーの再生、維持を図る主な施策といたしましては、子育て世帯の優先入居や子育て支援施設等の立地誘導による若年世帯の入居促進、みなし特定公共賃貸住宅の活用による中堅所得者層の入居の促進などの方策があります。また、建てかえを契機とした多様な住宅を供給することにより、高齢者世帯や若年者世帯の世代間交流ができると考えます。
今後の住宅政策を進める上で、こうしたコミュニティーは大変重要なことであると考えていますので、団地を中心として地域が生き生きとした町になるよう機能していくためにも、まちづくりのプラン、ビジョンが欠かせないものと思いますので、住民の御理解と御協力をいただきながら取り組んでまいります。
《再々質問》
まず、本市における身体障害者の雇用についてです。
市長から前向きなご答弁をいただきました。これまでのベクトルとは逆のやり方を検討していただけるとのことで、障害者の方々にとってはうれしく、勇気の出るお話だと思います。
障害者に合わせた職場作りという点では、社内ベンチャーならぬ庁内ベンチャーを立ち上げて、役所で発生する仕事を庁内ベンチャーで請けるというやり方も考えられるのではないでしょうか。テクニカルな部分については畠山副市長や山口財政局長が、情報の窓口を東京にお持ちなんじゃないかと思います。
そして、横河電機の担当者もおっしゃっておられましたが、何より大事なのは障害者の能力や特徴と仕事のマッチングです。これが合えば、障害者も活き活きとやりがいを持って仕事に励み、生活できる。役所も仕事がはかどります。合わなければ、両者にとって不幸な結果しか生み出しません。
市役所からの視点か、働く者からの視点か、目線の合わせ方で対応が大きく異なると思います。ぜひ眼に見える形で実現していただけるよう求めます。
最後は、公営住宅についてです。
色々な手法をお答えいただきました。次は市内の団地において、具体的に落としこんでいくことが必要になろうかと思います。何をどのように、と詰めていきたいのですが、第3問ですので、また次回に譲りたいと思います。また、まちづくりに欠かせないと認識していただいたプラン・ビジョンを示していただきたいと思います。
住宅の問題は単に社会基盤としての住宅問題だけでなく、福祉の問題、最低限度の生活を安定して営む人権の問題でもあります。今後も進捗状況を確認し、引き続きこの場で取り上げていきたいと思います。
以上で私の一般質問を終わります。
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