09年12月議会の一般質問全文
今日の質問の議事録を記します。なお、これは原稿ベースで、速報版です。実際の議事録は若干異なることをお含み置きください。正規は後に発行される議事録に拠ります。
《質問》
民主クラブの山本忠相です。今回は喫煙について、いわゆるたばこ対策について質問をさせていただきます。
昨年の2月議会でたばこ対策についての質問をさせていただきました。ちょうどそのとき県議会において和歌山県未成年者喫煙防止条例案が上程されていたところで、後に可決・成立となりました。前回の質問では主に喫煙が青少年に与える害について、また市内のタバコ自販機を撤去するための条例の制定を提案させていただき、市長の見解を伺いました。
今回は、喫煙が与える健康被害について、また行政ができることは何なのかを問いたいと思います。
まず、基本的な部分として、タバコが人体に与える影響をどのように把握されていますか。また、前回の質問の際、「喫煙による健康被害は極めて大きく、医療費への影響も甚大と考えられます。」とお答えいただきました。では、どの程度甚大なのか、お示し下さい。
前回の質問で、市内のタバコ自販機を撤去するための条例の制定を提案させていただいた際、市長は「青少年の健全育成や健康増進法などの観点から考えまして、議員の御指摘は重要な課題だと考えております。」「本市としてどのように対応していくか関係部局に研究させ、健康でいきいきとした和歌山市を目指す所存であります。」とお答えになりました。
あれから1年9ヶ月経過いたしましたので、研究の成果を報告してください。
以上で第1問といたします。
《有本健康福祉局長 答弁》
基本的な部分として、タバコが人体に与える影響をどのように把握しているかとのご質問です。
喫煙が健康に及ぼす影響については、がん、心臓病、脳卒中、肺気腫等特定の重要な疾病の罹患率や死亡率を高めることが指摘されています。
また、妊婦の喫煙では、流産、早産、低体重児などの発生率も高く、妊娠中の喫煙が胎児の発育に影響を及ぼすこともいわれています。
さらに、他人のたばこの煙を吸わされる受動喫煙による健康への影響も指摘されており、肺がんのほか、子どもの呼吸器などへの影響や乳児突然死症候群を引き起こす要因になるとされています。
平成20年度和歌山市市政世論調査から、男性の喫煙率は、35.7%であり、国の平均36.8%よりもやや低いものの、女性の喫煙率は、10.5%であり、国の平均9.1%よりも高い結果でした。
また、妊婦の喫煙率は、平成18年度7.5%、平成19年度8.9%、平成20年度7.2%でほぼ横ばいの状況にあります。
このような状況のもと、本市においては、がんによる死亡率が高く、特に肺がんによる死亡率が全国平均よりも高い状況にあります。
このことから、第4次和歌山市長期総合計画では、健康阻害要因となっている喫煙習慣の改善に取組むことを重点項目として、平成25年度の喫煙率を男性は25%に、女性は5%と目標設定し、禁煙教室や思春期教室などの健康教育、世界禁煙デーなどによる啓発・広報活動に努めるとともに、健康わかやま21推進協議会を核とし、今後とも地域活動を通じて、喫煙率の減少に積極的に取組んでまいります。
次に喫煙による健康被害は極めて大きく、医療費への影響も甚大と考えられます。ではどの程度甚大なのか、というご質問です。
厚生労働省の平成17年度国民医療費の概況等の調査資料によりますと、生活習慣病を原因とする死亡率は、全体の約6割を占めています。また、生活習慣病にかかる医療費につきましては、約10.7兆円であり、これは全体医療費33.1兆円の約3割を占めている状況にあります。
生活習慣病の主な疾患には、がん、脳血管疾患、糖尿病、高血圧疾患などがあり、これらを発症する要因として、喫煙を初め、運動、食生活、飲酒等が関係していると考えちれます。
このため、生活習慣病の疾病予防と医療費適正化の観点から、国においては、平成20年度から生活習慣病予防対策として、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症侯群)に着目した特定健康診査、特定保健指導が医療保険者に義務づけられました。この中でも喫煙歴は、特定保健指導が必要かどうかを判断する基準の一つとなっており、国の動向も、喫煙が健康に及ぼす健康被害については、大きなものであるとしています。
このことからも喫煙者の喫煙習慣を改善する取組みは、健康寿命の延びと医療費に甚大な影響を及ぼさないよう抑制を図るうえからも重要なことであり、これからも積極的に取組んでまいります。
《山本まちづくり局長 答弁》
市内のタバコ自販機撤去のための条例制定提案から1年9ケ月を経過しているが、現在の状況はどうか、というご質問です。
市タバコ税は平成15年度の約27億5千万円に比べ平成20年度には、25億8千万円と6.3%減少し、たばこ消費の減少がうかがえます。また、たばこ自動販売機については、和歌山県内ですが、平成20年3月に5,154台設置されていたものが約16%減少し、対面販売が進んでおります。
しかしながら、自動販売機撤去の条例制定については、営業の自由にかかる行為であり、その設置を禁止することは、憲法で保障された営業活動を条例で規制することになりかねず、非常に困難であると認識しております。
青少年の健全育成の推進や健康増進法の主旨に照らしまして、今後は業界団体と連携しながら各種啓発活動に努めていくことで、健康で生き生きとしたまちづくりを進めたいと考えております。
《再質問》
それぞれお答えを頂きましたので、第2問に入らせていただきます。
基本的なタバコが人体に与える害についてお答えいただきました。害については皆さんもよくご存知のことと思いますが、再認識をしていただきたく、質問させていただきました。
医療費への影響が甚大だということも、一人当たりどれだけ余分に医療費がかかるか、具体的に数字をお伺いしたかったのですが、試算が難しいと言うことで、その代わりに医療費を縮減するための取り組みについて、お答えいただきました。国も市もそれだけ本腰を入れて医療費の縮減に努めていることは理解しました。
ちなみに、奈良女子大学保健管理センターの高橋裕子教授が、喫煙者と非喫煙者の経済的な影響の比較について研究をされた論文を見つけました。
この論文では、平成7年から17年末までの11年間に、現在喫煙者14,230名、過去喫煙者6,595名、非喫煙者21,996名、合計42,821名のデータを集計して、①医療費の増加②入院による損失③死亡による損失④火災による財産損失⑤火災による死亡⑥火災による負傷の6項目について、経済的損失を推計しています。
その研究結果の一部をご紹介しますと、「喫煙者と非喫煙者の直接医療費の比較」では、男性の生涯非喫煙者における一人当たり1ヶ月当たりの医療費は36,912円、喫煙者では45,399円、女性の生涯非喫煙者は36,917円、喫煙者は41,940円と推計されたそうです。つまり、男性で毎月8,487円、女性で5,023円過剰に医療費がかかると推計されるそうです。
さて、本市の場合だったらどうなるか。信頼できるものかどうかは別にして、この研究結果を基に、私が和歌山市の国保加入者のデータを合成して、計算をしてみました。
極力研究データに近づけるため、平成17年の和歌山市国保加入者数、そして18年に調査した和歌山市民の喫煙率を利用しました。
平成17年の和歌山市国保加入者は男性66,220人、女性80,852人、合計147,072人でした。18年の和歌山市民の喫煙率は男性40.7%、女性11%。これに先ほどの直接医療費の差額を12か月分掛けたところ、総額約32億8093万円も余分に医療費を支払うことになっているのです。しかも、入院や死亡、火災の損失は入っていないので、これ以上に膨らむ可能性があるということです。
ということで、「タバコ税が入ってくるから」というロジックは使えないということもご理解をいただけると思います。
また、昨年2月の質問で市内のタバコ自販機を撤去するための条例の制定をお願いしましたが、営業活動を制限できないとのご答弁でした。あらかじめ予想されたお答えでしたが、ではなぜお聞きしたか。
喫煙者の70%以上は「やめられればやめたい」と思いながら、ニコチンの強い依存性によって「吸わされている」という実態が、世界各国で明らかとなっています。故平山雄(たけし)博士は「医学的、心理学的なアプローチをすれば、喫煙者の95%は禁煙願望を持っている」ことを確認し、それが喫煙率の大幅低下につながっている。タバコ自販機を撤去するなどの厳しい喫煙規制や禁煙運動は、タバコの煙に悩まされている多くの非喫煙者を救い、同時にやめたいと悩んでいる喫煙者を救う、最善の方法だとおっしゃっておられます。
そういうことで、物理的に喫煙規制をできないかとお伺いした次第です。
さて、そこで、行政ができることは何かを考えて行きたいと思います。
タバコに関する国際条約で、WHO世界保健機関のFCTCタバコ規制枠組み条約と言うのがあります。この第8条に「締約国は、屋内の職場、公共の輸送機関、屋内の公共の場所及び適当な場合には他の公共の場所におけるタバコの煙にさらされることからの保護を定める効果的な立法上、執行上、行政上又は他の措置を国内法によって決定された既存の国の権限の範囲内で採択し及び実施し、並びに権限のある他の当局による当該措置の採択及び実施を積極的に促進する。」とあります。これの期限が2010年2月までとなっています。
タイムリーなお話をさせていただくと、11月27日にイタリアで運転中の喫煙を禁止する法案が国会上院委員会に提出された。集中力低下による事故を防ぐと同時に、同乗者を受動喫煙から守るのが目的だそうです。法案が可決されると、運転中の喫煙だけでなく、火をつけただけで違反の対象となり、違反者には250ユーロ(約3万2千円)の反則金と、5点の減点が課せられるそうです。また、未成年者が同乗しているにもかかわらず、喫煙した乗員には500ユーロ(約6万4千円)の反則金が課せられることになるそうです。
ちなみにイギリスでは、すでに2007年の道交法改正で、運転中の喫煙が禁止されています。
このように、世界的にタバコへの規制が強化されていることは、ご理解いただけると思います。
また先の9月議会に、特定非営利法人日本禁煙学会から「和歌山市役所の可及的早期の建物内完全禁煙化を求める」陳情が届いているかと思います。その中にも同様のことが書かれていたかと思います。
これらの点から見て、多くの市民が出入りする和歌山市庁舎の現況は、この条約の趣旨にそぐわず、ベストな状態ではないと考えます。そこで、市庁舎を全面禁煙にすることはできないでしょうか。
また、以前から非常に気になっているのが、伏虎中学校の真ん中を通る歩行者専用道路です。日中は開いた窓から授業内容が聞こえてくることもあります。放課後となれば吹奏楽の練習をする生徒や、運動部の部員が準備体操をする横を、大人が歩きタバコで歩いていく姿を日に1度は見かけます。一般に開放された道路ではありますが、校舎を貫く特殊性からすれば、決してこのままではいけないと思います。そこで、伏虎中学校の真ん中を通る歩行者専用道路を禁煙道路にできないでしょうか。
以上、当局の見解をお伺いして第2問といたします。
《大橋市長 答弁》
市庁舎を全面禁煙にしてはどうか、というご提案です。
喫煙は、本人にとどまらず受動喫煙する者にも健康上の悪影響を及ぼすものと認識しています。
職員に対しては、健康保持の観点から禁煙の啓発や産業医による指導を行い、一方、庁舎内については、来庁者や職員の受動喫煙を防止するために分煙化を進めてまいりました。
平成15年には、健康増進法が施行されたことに伴い、エレベーター前の分煙ベンチを撤去し、喫煙場所を喫煙室に限定することにより、分煙を強化し、受動喫煙を防止しているところです。
喫煙については、より望ましいのは庁舎内を全面禁煙にすることだと考えますが、現在、市役所衛生委員会でも、労使双方で健康管理上の観点から検討しているところですので、今後、検討結果も踏まえて、受動契煙防止対策に取り組んでまいります。
《大江教育長 答弁》
伏虎中学校の真ん中を通る歩行者専用通路を禁煙化にできないか、というご質問です。
学校敷地内禁煙につきましては、平成14年4月から、教職員だけでなく保護者などの学校への来校者にも協力をいただき、全学校において取り組んでいるところです。
伏虎中学校の間を通る市道での歩行者等の喫煙については、学校長からは、今のところ特に生徒への受動喫煙等の問題はないと聞いております。
しかしながら、良好な教育環境は、教育委員会が主体性をもって構築しなければならないとの観点から、今後、生徒の健全育成や健康面などで影響があると考えられる場合には、禁煙化について関係部局に働きかけてまいります。
《再々質問》
まず、市庁舎の全面禁煙ですが、検討されているとのことですので、よろしくお願いいたします。
また、伏虎中学校の真ん中を通る歩行者専用道路を禁煙道路にする件についてですが、事が起こってからでは遅いので、前向きに検討していただけるよう強く求めたいと思います。
最後に、私のところに届いた匿名のメールをご紹介します。差出人は本市の職員さんです。
本年4月に新しい職場へ異動されたのですが、喫煙室から流れてくるタバコの煙で毎日とても辛い思いをされているそうです。
このメールは次のような言葉で締めくくられています。
「私一人の意見を言っても何も変わりません。しかし、市民の方や団体の方からのお声があれば、時代の流れに沿って、喫煙状況が変わる可能性があります。いきなりの身勝手なことで申し訳ありませんが、なんとかお力になっていただけないでしょうか。よろしくお願いします。」
政治は弱い人、困っている方の手助けをするのが本旨であると思います。それが一人であろうと、ちょっとでも何とかしたいと思って、今回の質問に立ちましたことを、喫煙される先輩・同僚議員、市幹部や職員の皆さん、そして市民の皆さんにもご理解を賜り、私の一般質問といたします。ご清聴ありがとうございました。
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