2012年2月議会の代表質問全文
今日の質問の議事録を記します。なお、これは原稿ベースで、速報版です。実際の議事録は若干異なることをお含み置きください。正規は後に発行される議事録に拠ります。
《質問》
民主クラブの山本忠相です。民主クラブを代表して、3つの項目について質問させていただきます。
まずはじめに、市長の政治姿勢についてです。
来る日も来る日もその名前や顔を、テレビや新聞、雑誌等で見ない日はない人物と言えば、橋下徹大阪市長です。今日の代表質問でもすでに2回登場しました。矢継ぎ早に、これでもかというほど様々な話題を提供しています。
特に教育に関するものが多く、教育基本条例案では首長が教育目標を定め、教育委員はその目標を実現する責務を負う。その責を果たさないときは、議会の同意を得て罷免させる条項を入れると共に、教職員への相対評価による人事評定を盛り込んでいました。
しかし、教育委員の罷免については地方教育行政法における違法性を文部科学省から指摘され、取り下げ。首長が目標を設定することについても「首長が教育委員会と協議して目標を決定する」となりました。
教職員の人事評価では、5段階の相対評価で、最低ランクが2年連続続いた教員は分限免職の対象にするとしていました。しかし、教育委員側の反発もあり、保護者や生徒からの申し立て権を認めることで、これは撤回されることになりました。
一方で、貧困家庭には習い事にも使える教育バウチャー、クーポン制度を検討したり、義務教育課程の小中学生にも留年制度を検討するよう指示を出したりしています。
さて、あらゆる手段でもって、地方自治の屋台骨を揺るがしているわけですが、これが隣の府の府庁所在地の話だと言って終わらせてしまえるかといえば、決して対岸の火事ではないと思います。
先日も滋賀県の嘉田知事は、大阪が愛知と連携するという話に触れ、「大都市連携は劇薬で、滋賀は漢方薬。滋賀のような地方には劇薬はそぐわない」と述べられました。嘉田知事のように、うちにはうちのやり方があると、楔を打った方もいらっしゃいます。
これら教育をめぐる大阪の動向について、同じ首長として大橋市長はどのように受け止め、考えていらっしゃいますか。大阪のことだから、和歌山に関係ないという向きもあるようですが、しかし我が街の市長がどっちを向いているのかは、市民にとって非常に重要な事柄であります。お聞かせ下さい。
また、先程述べた教育委員会に対する方針においても、橋下市長はことあるごとに「民意」という言葉を使われます。たいていは自らが選挙で選ばれたことを指して、選ばれた人間が主張することを「民意」とおっしゃっておられるようですが、大橋市長は「民意」をどのように理解されていらっしゃるでしょうか。お伺いします。
次に、和歌山市民の幸福度についてお尋ねします。
昨年11月、法政大学大学院政策創造研究科の坂本光司教授が、経済的な指標ではなく「幸福度」を数値化しようと調査。様々な社会経済統計を利用し、住民の幸福度や満足度を都道府県別にランキングし発表しました。
この幸福度ランキングは「住みやすい県はどこか?」という生活・家庭部門、「働きがいのある県はどこか」という労働・企業部門、「心配なく過ごせる県はどこか?」という安全・安心部門、「健やかに暮らせる県はどこか?」という医療・健康部門の4部門40の指標から成り立っています。それぞれの指標をそのまま比較したり、人口による差をなくすために10万人当たりの数字に直したりして比較し、順位付けしています。
このランキングはただ単に順位付けによって優劣を決めることが目的ではなく、ランキングや評点を通じて、客観的事実に基づく問題の所在の理解認識と、それに基づく地域住民の「幸福度づくり対策」、つまり地域住民が幸せとなる地域づくりを講じてほしいことにあると、坂本教授は述べられています。
今回のランキングによれば、和歌山県は32位でした。労働・企業部門は6位と高いものの、他の3つは30位以下と低迷していました。そこで気になるのが、我が街和歌山市はどうなのだろうかと、いうことです。
全国の市町村と比較してもいいのですが、一人で調査するには物理的に困難であることと、またそれぞれ地域の特色があるので、他都市と比較することが必ずしも効果的ではないと考え、時間軸での比較とし、ちょうど大橋市長が就任された平成14年の数字と、手に入る最新の平成22年を対象としました。
比較に利用された40の指標について和歌山市の数字を一つずつ拾いはじめたのですが、残念ながら市町村別に公表されていない統計が多く、確実に両年を拾えるものは14統計でした。中には5年毎の統計もあります。それぞれお示ししていきますが、特段注釈がつかないものは平成14年と22年を比較したものとご理解下さい。
生活・家庭部門では、良くなっているもので合計特殊出生率が1.29から1.47、下水道普及率は24%から34.5%に、保育所収容定員比率は35.55%から47.16%に、悪くなっているものは転入率が2.34から2.13に、家計に占める交際費の率は10.73から10.16に、生活保護比率は12.3から21.2になっています。
労働・企業部門では完全失業率は平成12年で5.7%だったものが平成17年には6.64%になっています。これ以外に離職非就業者率や正社員比率などが使われていますが、あまり有効な数字が拾えませんでした。
安全・安心部門では千人当たり刑法犯認知件数が27.2件から14.5件に、1万人当たり出火率が4.83から3.25に、1人当たり地方債現在高は859,037円から896,395.2円に、1世帯当たり負債現在高は319万円が393万円に、1世帯当たり貯蓄現在高は1711万円が1408万円に、65歳以上1人当たり老人福祉費は109,264円だったものが101,890円になっていますが、これは分子である老人福祉費が増加しているものの、分母に当たる65歳以上人口がそれ以上の割合で増えているため、一人当たりの数字は小さくなり、見かけの数字は減っています。
医療・健康部門では1万人当たり病院と診療所の病床数が193.1床から184.2床へ、1万人当たり医師数が35.2人から38.6人になっています。
坂本教授が選ばれた指標以外に、私が独自に選んだ指標として、観光宿泊客数と日帰り客数を比較しました。これは観光客が魅力に感じる街は住民も魅力的に思い、住民の幸福度も高いという判断からです。観光宿泊客数は561,508人が541,054人に、日帰り客数が5,443,651人から5,276,204人になっています。
2つ目の独自指標として、地場産業がどのぐらいの力を持っているのか、地域経済がどのぐらいの底力を持っているのかを知るために、和歌山市における従業者4人以上の事業所における製造品出荷額等と付加価値額を比較しました。この統計は、どれだけ製品を生産し、それにどれだけの付加価値を付けられているかを見るものです。
製造品出荷額等は9180億39百万円が1兆3391億85百万円に膨れ上がったものの、付加価値額は4765億36百万円から4838億2千万円と微増したに留まりました。
また家計は物価に左右されます。消費者物価指数を比較すると、平成17年を100としたとき平成14年は101.3であったのが平成22年は101.8と若干の上昇です。
こうしてみたとき、完全失業率や生活保護率、世帯あたりの負債額、1人当たり地方債現在高が増えています。世帯あたりの貯蓄高、観光客数も減少しており、このことは地域経済に影響を及ぼします。
先程の製造品出荷額等は大幅に増えているものの、その割には付加価値額が延びていない。付加価値とはGDP国内総生産であり、GDI国内総所得であり、GDE国内総支出でもある。つまり「もうけ」そのもののことなのです。これを最大限伸ばすことが、最終的に和歌山市の経済を動かすことになります。この付加価値を伸ばす必要があるのではないでしょうか。
はじめにも述べましたが、ランキングの目的はただ単に順位付けによって優劣を決めることではなく、ランキングや評点を通して、客観的な事実に基づいて問題や課題がどこにあるのかを理解し認識するとともに、それを使って地域住民の「幸福度づくり対策」、つまり地域住民が幸せとなる地域づくりを行っていくことにあります。他との比較か、時間軸での比較であるかの違いだけで、最終の着地点は同じです。
以上、十分探し出せたものではありませんが、いくつかの統計の数字をご覧になっていただいた上で、市民の幸福度を向上させていくことについて、市長はどのようなお考えをお持ちでしょうか。お聞かせ下さい。
最後に、和歌山インターチェンジ周辺の土地利活用についてお伺いします。
ほぼ2年前の平成22年3月14日、和歌山北ICが開通しました。当初4200台の通行量を見込んでいましたが、最近の実績では日量約5200台と、予想を1000台も上回る利用があるようです。また24年度予算案の中には仮称和歌山南IC設置の調査費も計上されております。
和歌山でICといえば、昭和49年に設置された和歌山ICであります。長く県都の玄関口として重要な役割を担い続けています。
さて、IC周辺を自家用車で走ることもありますし、関空へ行く際にリムジンバスから風景を眺めるのですが、その度にこれが県都のICかと、残念でなりません。関空から一番近い県都の玄関口が非常に煩雑である、和歌山IC周辺の土地は十分に利活用されていないのではないかという印象を持つのですが、そう思うのは私だけでしょうか。
ICを境にして東西で、市街化区域と調整区域に別れています。またICの横には農地もあります。そんなICは決して珍しいものではありません。
先日視察で訪れた大分市には、4つのインターチェンジがありますが、大分ICに隣接して約100万平米の開発されたであろう住宅地があり、農地もあります。大分米良ICにはゴルフ場が隣接、1キロあまりのところに住宅地があり、大分光吉ICには住宅地と大規模商業施設が隣接、大分宮河内ICにも開発住宅地が隣接しています。ちなみに大分市は面積が501.28平方キロ、人口は約47万6千人です。
では和歌山ICはどうか。グーグルマップで和歌山IC周辺の衛星写真を見ても非常にスカスカです。これはやはり、政策誘導的に利活用の方法を考えなくてはならないのではないかと思います。
2月26日に市の都市整備課が主催した『都市再生とコンパクトなまちづくり―戦略的都市再生プログラムに係るシンポジウム―』が行われました。大橋市長もパネリストとして参加されていましたが、この終了後、基調講演をされた名城大学都市情報学部の海道清信教授に、本市の都市計画図をご覧になっていただきながらお話しし、お帰りになるのを少し引き止めてしまいました。
その際、地区計画を立てて整理を行えばよいと教えていただきました。地区計画といえば、大規模なものを想像しがちですが、実は大きさに制限はないそうで、周囲10軒程度の範囲ででも、範囲の世帯や地権者が合意をすれば実施できるそうです。海道先生は実際、北陸のある都市で、都市計画マスタープランの策定に関わられて、このことを実践されているそうです。
IC周辺の土地利活用について、今後の方針など、どのようにお考えでしょうか。
以上、3項目をお伺いし、民主クラブの代表質問を終わります。ありがとうございました。
《大橋市長 答弁》
私は、平成14年に市長に就任して以来、ふるさと和歌山に誇りと活気とやさしさを取り戻そうと、ひたすら地道に、着実に、誠実に市政に取り組む姿勢を貫いてきました。
橋下市長のように大胆な改革プランを花火のように次々打ち上げ、市民やマスコミの反応を見ながら少しずつ姿勢を修正していくという手法とは異なり、課題を見極め、必要なことを一歩ずつ着実に進めていくのが私の政治スタイルです。この点では「漢方薬」とおっしゃった嘉田・滋賀県知事の考えに近いものがあると思っています。
また、私と考えが違うと感じるところは、橋下市長の文化芸術に対する姿勢です。私はふるさと独自の文化や伝統を行政と市民がともに守り育てていくことが、地域力をあげていくための有効な手法であると考えています。
教育については、私は就任時から「教育のパワーアップ」を公約に掲げ、教育の充実を重点施策としてまいりました。次代を担う子どもたちに、生きていく上で必要な社会常識や基本的な知力や体力を身につけさせ、同時に優しさや強い心を育むために小・中学校教育を充実させていくことは市の大きな責務であると考えています。
私は教育委員の皆さんとは、毎年何度か定期的に懇談会を開いています。その場での様々な意見交換を通じて、私の市政に対する基本理念を理解していただくとともに、現在の教育課題について共通の理解を有していると考えております。よって、教育委員会は克服すべき課題について、企画・実施・検証・改善の循環による、より良い教育施策の実現に努めていると考えております。
次に、民意についてですが、私は、市長として市政の基本理念に「市民が主役」を掲げ、これまでも「校区トーク」や「市政モニター会議」、「ジュニア会議」、「防災マップ説明会」などを通じて市民の皆さんと直接接し、対話を重ねてきました。多数の人々によって共有される信念や感情だけでなく、少数の意見や小さな声にも耳を傾けながら市政を運営していくことで、「信頼される市政」を実現していく所存であります。
統計指標をモノサシとして市民の幸福度を測るというお話について、興味を持って承りました。
様々な指標には、市の努力によって改善できるものと経済環境の変化によるものがありますが、市民の幸福度を表すものでありますので各指標の向上を目指して、まちづくりを進めていきたいと思います。
議員が重点を置かれた付加価値額につきましては、工業統計調査の平成14年と平成22年の結果を比較すると、本市の製造品出荷額等は約46%伸びているのに対して、付加価値額の伸びは1.5%に止まり、一見すると低いという感じがします。
しかし、全国の結果を見ると、製造品出荷額等の伸びは11.7%で、付加価値額は逆に8.1%減少しています。
このことから、本市の製造業が、全国的に付加価値額が減少する厳しい時代にもかかわらず、非常にがんばっておられるということが言え、更なる高付加価値化を促進し、本市の強みを更に磨いていく必要があると考えています。
特に、古くから本市の産業を支えている地場産業については、地域活性化の柱と考え、需要開拓、高付加価値製品の開発等に対応していくため、平成24年度から「和歌山ニット販路開拓支援事業補助金」を新設し、ブランド化を図っていきたいと考えております。
平成23年度から実施している人材育成やものづくりの活性化を図る「地場産業技術伝承事業補助金」を増額し、地場産業の支援に取り組む予算を計上しています。
また、平成24年度組織改正においては、まちおこし推進課の商工振興班を商業振興班と工業振興班に分け、庁内の支援体制の強化を図ったところです。
対外的には、各関係団体、県及びわかやま産業振興財団等の専門機関と連携を図りながら、地場産業の「競争力強化」・「ブランド力強化」などに取り組んでまいります。
《東まちづくり局長 答弁》
和歌山インターチェンジ周辺は、都市計画マスタープランにおいて、市街地の整備目標を、運輸流通拠点の計画的整備と定めています。
市街化調整区域におきましては、その都市計画の目標と整合を図り、インターチェンジとの交通アクセスが図れる地域に、流通業務施設を初めとした企業進出を可能とする立地基準を平成13年に設けて、土地利用の誘導を行ってきました。
今後も、インターチェンジ周辺の市街化調整区域につきましては、運輸業や倉庫業を中心とした産業ゾーンとして、都市機能の拡散とならないよう規制と誘導をしてまいります。
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